読書 漁港の肉子ちゃん 2021.01.01

2021年1月6日


夢中になれる文章というのは2種類あって、文章全体が大きなうねりのように躍動して読んでるうちにストーリーの中に飲み込まれていくような文章と、言葉の一つ一つが心地良いリズムを刻んで、心地よさに身を任せているうちに気がつけば本の中に自分がいるかのように感じてしまう文章。「漁港の肉子ちゃん」は明らかに後者。感受性が強く、子供のままでいたい気持ちと早く大人になりたい気持ちの中で揺れる小学生の主人公"キクりん"とキクりんのお母さんで、まるまると太って鈍感で頭も悪いけど、底抜けに人の良い"肉子ちゃん”。漁港で暮らす2人と周りの人たちを描く文章の1つ1つにクスっとさせられ、驚かされ、そして優しい気持ちにさせてくれる。

読んでいて西原理恵子さんの初期の頃の漫画を思い出した。西原さんの漫画は決して恵まれているのは言えない日常をユーモアたっぷりに描く。悲しみや怒り、悔しさ、そして何よりやり切れなさを笑いの中にごちゃまぜにして、読み手の心の中に深い印象を残す。この本も全く同じで、キクりんが肉子ちゃんに思っていることをぶつけるシーンの2人の会話は、笑っていいのか泣いていいのか複雑な気持ちになってしまう。

読み終わった後に、言葉にならない爽やかで、そして深い感動を残す。

読書

Posted by くらっきー