映画レビュー⑥Inhuman Kiss-前編

2020年4月11日


やはりタイのホラー映画と言えば、そう誰もが知ってるタイの妖怪ピーガスー (ผีกระสือ)ものです。え?知らない?・・・・まずは日本ではあまりメジャーではないけれどタイ人なら誰でも知ってる妖怪ピーガスーについて説明します。

ピーガスーは女の妖怪で、昼間は普通に人間と同じように暮らしているけれど、夜、寝てる間に首が体を離れて飛び回り、家畜や赤ん坊を襲うと言われています。ただ首と一緒に内蔵も首にくっついて行くため、ビジュアル的には非常にインパクトの強い妖怪です。日本だとろくろ首なんでしょうが、首が伸びるのではなく内臓ごとすっぽ抜けるというのが大きな違いです。

なかなか突っ込みどころ満載の妖怪で

・飛んでる時は光る。

・襲う家畜がいなければ糞尿を食べる。

・食べた家畜や糞尿を干してある洗濯物で拭う。そのため、夜中に洗濯物を干すのは縁起が悪いとされる。

・松明が苦手。退治する方法は首が飛んでいる間に本体を燃やす。

その他もろもろの設定があり、調べれば調べるほどに古くからタイで認知されている妖怪であることがうかがえます。水木御大が生きていれば間違いなくタイの妖怪代表に選ぶはずです。

さて映画の本編。この映画はホラー映画でありながら、男女の三角関係を描いたラブロマンスであり、妖怪モンスターバトル映画であるという盛りだくさん過ぎてジャンルの枠をだいぶはみ出してこぼれている怪作です。

大人から決して近づいてはいけないと言われていた森の中の廃屋。ホラー映画で子供に「近づいてはいけない」と言う以上は当然ですが近づいてしまいます。仲良しの子供たちジェッド、ノイ、サイ、ティンの4人は怖いもの見たさで廃屋を訪れ、かくれんぼを始めます。隠れる場所を探しいたサイは部屋の奥に不思議な小箱を発見します。しかし小箱の中には何もありませんでした。

箱をのぞき込んでる間に「志村、後ろ後ろ!」な展開になります。まあ、お約束です。しかし振りむくことなく場面は変わります。

場面が変わって大人になったサイ。毎晩不思議な悪夢にうなされます。

ノイはバンコクに引越し、ティンは1児の母。そしてサイは近くの病院を手伝う傍ら看護師になる事を夢見ています。ジェッドはそんなサイにベタぼれ。サイに常にくっついて行動します。その頃、村では妖怪ピーガスーが夜中に現れるとの噂でもちきりでした。

サイの悪夢は続きます。そして夢の断片の中に子供の頃遊んだ廃屋。ある日、サイはジェッドとともに廃屋を訪れます(なぜ夜である必要があるのか。。。)

廃屋へ向かう途中で思わぬ人と再会します。それはバンコクに引越していったノイでした。バンコクが戦火に見舞われた為、故郷の村へと帰ってきたのでした。しかし彼は村に帰る為にある集団に協力を求めていました。

それはノイの村にピーガスーの言い伝えがあると聞いた妖怪ハンター達。見るからにヤバそうな集団です。リーダーのタッドは集団を村に滞在させピーガスー狩りを行います。村は胡散臭い集団に半信半疑な村人と率先して協力する村人に分かれます。

サイの悪夢と異変は続きます。朝になると血だらけになっているベッド。そして体の異変。

村ではピーガスーによる被害が大きくなってきました。

そしてついにサイが。。。

サイがピーガスーへ変貌していくのを目撃するノイ。

サイがピーガスーである事を知ったノイは悩み、放浪の末、倒れていたところを村の僧侶に救われます。僧侶はピーガスーの言い伝えをノイに聞かせます。「ピーガスーは長らく村と共存してきた。」「ピーガスーと同じ水を飲んだ女は新たなピーガスーとなり、男は激痛で苦しむ。」そしてノイに「自分の見たことだけを信じて進みなさい」との言葉を与えます。この時ノイはサイの協力者になることを決心します。

一方、村ではピーガスー狩りが激しくなっており、ジェッドは志願してピーガスー狩りに参加します。幼馴染の3人は、ピーガスーとなったサイ、ピーガスーを守るノイ、そしてピーガスーを狩ろうとするジェッド、と完全に分かれてしまいます。

長くなったので後半へ続きます。後半は怒涛の展開が待ってます。

後編はこちら